足に虚血が生じる速さで歩くとPADの歩行制限が改善する

末梢動脈疾患(PAD)の痛みのために長時間歩き続けられないという症状に対する、歩行運動の効果が報告された。ある程度の速さでの歩行を続けていると、歩行可能距離を延ばせる可能性があるという。その速さとは、足に痛みが生じる速さであり、痛みを生じない速度では効果が認められないとのことだ。米ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部のMary McDermott氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に4月6日掲載された。

PADとは、動脈硬化のために主として下肢の血流が不足する病気のこと。安静時に症状がなくても、歩き始めてしばらくたつと足の筋肉の虚血(血流不足)が起きて痛みを生じ、休憩後にはまた少し歩けるという「間欠性跛行」と呼ばれる症状が現れる。米国では約850万人、世界では約2億5000万人がPADを患っていると推計されている。

歩行運動には筋肉の血管新生を促すことなどによる、間欠性跛行の改善効果があることが知られている。しかし、その適切な歩行速度は明らかでない。McDermott氏らは、PAD患者に異なる2種類の速度で歩行運動を続けてもらい、効果を比較するという研究を行った。なお、この研究は米国立心肺血液研究所(NHLBI)の資金提供によって行われた。

研究対象は米国内4カ所の医療機関のPAD患者305人(平均年齢69.3±9.5歳、47.9%が女性)。参加者をランダムに以下の3群に分類。1群は歩行運動を課さない対照群(65人)とし、他の2群のうち1群は虚血による痛みが生じない速度での歩行を課す低速歩行群(116人)、他の1群は虚血による痛みを生じる速度での歩行を課す高速歩行群(124人)。後二者の歩行群の患者には1回50分、週5回の歩行運動を続けてもらった。12カ月後、6分間で歩行できる距離を計測した。歩行運動を12カ月間継続したのは250人(82%)だった。

歩行を課さなかった対照群の6分間の歩行距離は、ベースライン時が328.1m、12カ月後は317.5mであり、有意な変化は見られなかった〔変化量-15.1m(95%信頼区間-35.8~5.7)、P=0.10〕。低速歩行群も、ベースライン時332.1m、12カ月後327.5mで、やはり有意な変化はなかった〔変化量-6.4m(同-21.5~8.8)、P=0.34〕。この両群の変化量に有意差はなく〔対照群に対し低速歩行群が8.7 m(97.5%信頼区間-17.0~34.4)、P=0.44〕、足に虚血が生じない速度の歩行には、歩行距離を伸ばす効果が認められなかった。

一方、高速歩行群は、ベースライン時の338.1mから12カ月後には371.2mとなり、歩行距離が有意に伸びていた〔変化量34.5(95%信頼区間20.1~48.9)、P<0.001〕。また低速歩行群との比較で変化量に有意差が認められた〔高速歩行群に対し低速歩行群が-40.9m(97.5%信頼区間-61.7~-20.0)、P<0.001〕。なお、有害事象は全体で184件発生し、各群の参加者1人当たりの発生率は、対照群0.46、低速歩行群0.64、高速歩行群0.65だった。

McDermott氏は、「高強度の運動は、生物学的反応を引き起こして筋肉の健康と脚への血流を改善する可能性が高い」とまとめている。また、「本研究では、歩行運動に痛みを和らげる効果があるのかは評価しなかった。この点についてはさらなる研究が必要」と、今後の展開に期待を述べている。

本報告をレビューした米アーマンソン-UCLA心筋症センター所長のGregg Fonarow氏は、「この知見はPAD患者に対する高強度運動の重要性を支持するものだ」とした上で、「低強度運動は高強度運動よりも、効果が有意に低い。PADの歩行制限の改善に関して、低強度の運動には痛みも利益もないということだ」と付言している。(HealthDay News 2021年4月7日)

https://consumer.healthday.com/4-8-for-pad-suffere...

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